「3,776: the digital anatomy ~富士山の解剖学~」は、
東京ミッドタウン芝生広場上のモニュメント『江戸富士』に重ねられた空間演出と、
本サイト上に構築された富士山の3Dモデルを中心とした情報空間によって
構成されるインスタレーションです。

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ABOUT

Rhizomatiks Architectureが企画した「3,776: the digital anatomy」は、富士山に関する研究および観測データをヴィジュアライズするプロジェクトです。東京ミッドタウン芝生広場につくられた高さ約6m、幅約23mのモニュメント『江戸富士』に対して、本WEBサイト上に構築された情報空間を重ねることにより、知られざる富士山が浮かび上がります。

「3,776: the digital anatomy ~富士山の解剖学~」期間:4/21 - 5/28 11:00 - 21:00
*18:00 - 21:00 特別ライトアップ
会場:東京ミッドタウン(ミッドタウン・ガーデン 芝生広場)
参加費:無料 入場自由http://www.tokyo-midtown.com/jp/event/openthepark/

日本の象徴・富士山を、日本人はどれだけ知っているだろうか?
富士山の環境観測データ・研究をヴィジュアライズした「3,776: the digital anatomy」は、東京ミッドタウン芝生広場上の『江戸富士』に重ねられた空間演出と、本サイト上に構築された富士山の3Dモデルを中心とした情報空間によって構成されるインスタレーションです。

東京ミッドタウン芝生広場では『江戸富士』に立てられた全17台の縦長ディスプレイと、円環上に配置された照明によって、実際の富士山で観測されたデータを体感できます。そして本サイトでは、データがヴィジュアライズされた過程や最新の富士山研究についての情報をお届け。『江戸富士』に設置された各ディスプレイで10 分を1 サイクルとする映像を鑑賞しながら周りを歩き、富士山が見せるさまざまな側面をご覧ください。

*本サイトの富士山3Dモデルは、実物と比べて高さ方向に1.25倍しています。

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監修:安原正也
立正大学地球環境科学部教授 理学博士筑波大学大学院博士課程地球科学研究科修了。
通商産業省地質調査所、(独)産業技術総合研究所を経て2015年より現職。専門は火山水文学。同位体・水質化学的手法に基づき、富士山をはじめとする国内外の火山の水文システム研究に従事。

主催:東京ミッドタウン
企画・制作:Rhizomatiks Architecture
協力:『WIRED』日本版

データ・情報出典:気象庁、防災科学技術研究所 V-net 基盤的火山観測網、『富士火山 2007』 山梨県環境科学研究所 日本火山学会編、『富士山-その自然のすべて」 諏訪彰 同文書院、「富士山 大噴火をくりかえしてきた日本最大の活火山」『Newton』2013年8月号 ニュートンプレス

Atmosphere大気

周囲に他の山がない独立峰である富士山は、その周辺の環境に大きな影響を及ぼしてきました。その存在が空気の流れを変え、雲を生み雨や雪が降ることによって、富士山を取り巻く空気は刻々と変化し、見飽きることのない風景をつくってきたのです。そんな富士山周辺の空気を、気象庁の観測データに基づきディスプレイ毎にヴィジュアライズしました。

気象庁のデータを元に、各地点と観測地点の位置関係から、地点固有のデータを算出しています。流れる一日の時間を縦軸にとり、気温や湿度等、計8つの観測データを横軸に連続して並べました。それぞれの値は、大きくなるにつれ色が鮮やかになり、他のディスプレイとの色味の違いによって、その場の空気の固有性を感じることができます。ヴィジュアライズに使用されているデータは次の8種類です。
気温:Temperature (℃)、湿度:Relative humidity (%)、蒸気圧:Vapor pressure (hPa)、露点温度:Dew point temperature (°C)、降水量:Amount of precipitation (mm)、日照時間:Daylight hours (hours)、風速:Wind speed (m/s)、風向:Wind direction

使用データ:気象観測データ、出典:気象庁

Column Inside 3,776富士の雲、
天気予報的中率7割越え!?

「とさか笠雲」、「つばさ雲」、「はち雲」、「まえかけ笠雲」…。まわりに高い山がない富士山は周囲から雲を観測することが容易であり、昔から多くの名前が雲に付けられてきた。その名称は大きく、笠雲(山頂の上に浮かんだ雲)と吊るし雲(山の横に滞留した雲)の2つに分けられる。その特徴的なかたちは、周辺に住むひとびとの知見に取り込まれ、それぞれの雲と天気とがむすびつけられ、いまに至るまで伝承されてきた。

いわく、「富士山が笠をかぶれば近いうちに雨」「ひとつ笠は雨、二重笠は風雨」…。1932年に設置された河口湖観測所(現:河口湖特別地域気象観測所)では、古くは設置直後の33年から52年まで20年間の雲に関する観測データがまとめられている。20年間に笠雲は1,473回、吊るし雲は239回現れたという。それぞれ、1カ月に6回、1カ月に1回程度の頻度である。人々にとって、これらの雲が身近な存在だったことがわかる。また、それぞれが現れた翌日に雨が降った確立は、笠雲の場合72%、吊るし雲の場合82%。いずれの雲も、雨との明確な相関関係がみられる。

富士山の上にかかった、典型的な笠雲。©koike yasuyuki/Nature Production/amanaimages

規格外の風速

これらの雲の名前は遠くから観測する人々が親しみをこめて命名してきたものだが、一方で富士山をとりまく空気は、乱気流や突風といった荒々しさとしても、人間の前に現れてきた。12月、1月、2月の風は一番つよく、平均すると山頂では風速14m/s程度となる。地上の風速と比べると7〜8倍である。瞬間最大風速に至っては、風速60〜90m/sを記録することもあるというから、その厳しさがわかる。1960年代の富士山測候所の観測員の記録には、山頂の建物が壊れそうになった様子も残っている。

富士山の風が猛威をふるうのは、地上だけではない。上空にも大きな乱気流を起こすことがある。1966年3月5日、イギリス海外航空(現:ブリティッシュ・エアウェイズ)の航空機が富士山の東南東斜面、5合目付近に墜落する事故が発生した。原因は、富士山周辺に存在した乱気流の衝撃に、航空機の機体が耐えきれず、空中分解を起こしたことである。当日の天気は快晴だった。この事故が起こるまで、富士山に乱気流が存在することは、気候関係の学会においても知られていなかった。

様々な名前がついた雲がわれわれに天気を教えてくれる一方で、航空機を墜落させるほどの突風を発生させる、富士山の大気。ときに親しみやすく、ときに厳しいその両面は、富士山という存在の巨大さを改めて認識させてくれる。

参考文献:
「富士山 大噴火をくりかえしてきた日本最大の活火山」『Newton』2013年8月号 ニュートンプレス、『富士山 その自然のすべて』諏訪 彰 同文書院

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BASIC

東京ミッドタウン芝生広場に作られた高さ約6m、幅約23mのモニュメント『江戸富士』に対して、Rhizomatiks Architectureが重ねた空間展示『3776:the digital anatomy』についての より詳しい情報を提供します。

展示名称:3776 : the digital anatomy ~富士山の解剖学~
展示期間:4/21 - 6/4 11:00 -21:00 *18:00 - 21:00 特別ライトアップ
展示会場:東京ミッドタウン(ミッドタウン・ガーデン 芝生広場)
参加費:無料 入場自由

監修:
安原正也

立正大学地球環境科学部教授 理学博士
筑波大学大学院博士課程地球科学研究科修了.
通商産業省地質調査所,(独)産業技術総合研究所を経て2015年より現職.
専門は火山水文学.同位体・水質化学的手法に基づき,富士山をはじめとする国内外の火山の水文システム研究に従事.

監修:
安原正也

立正大学地球環境科学部教授 理学博士
筑波大学大学院博士課程地球科学研究科修了.
通商産業省地質調査所,(独)産業技術総合研究所を経て2015年より現職.
専門は火山水文学.同位体・水質化学的手法に基づき,富士山をはじめとする国内外の火山の水文システム研究に従事.

Rainfall

太平洋に面し孤立する富士山は、湿潤な空気が斜面にぶつかり、雨雲が発生しやすく、1年を通じて降水量が多いことが特徴です。降った雨水は、地中へ深く染み込み山嶺にて湧水することで、豊かな自然を育み、人々の生活を支えてきました。そんな恵みの雨を、各地点の年降水量に基づきビジュアライズしています。

富士山の年降水量分布を分析した木澤綏の研究データから、各地点における値を抽出しました。降水量が多いほど、水滴と水滴のあいだに働く引力が強くなり、より大きな水滴へと成長していきます。

使用データ:富士山の年降水量分布(木澤 綏)、出典:『富士山自然の謎を解く』 木澤綏・飯田睦治郎・松山資郎・宮脇昭 日本放送出版協会

Column Inside 3,776なぜ富士山は「水の山」と呼ばれるのか?

日本で最初のミネラルウォーターは、1929年に創業した堀内合名会社(現:富士ミネラルウォーター)が山梨県から湧出する富士山嶺の水を使用した「NIPPON EVIAN」である。富士山は「水の山」と言われることもあるほど、その豊富な水資源で知られてきた。

そもそも、太平洋に面し孤立する富士山には、湿潤な大気が多くの雨や雪をもたらす。その総量は年間22億トンとも言われ、富士山東麗の御殿場市では年間降水量は2,900mmを計測する。日本全体の平均が1,718mmであることを考えると、その多さがわかる〈国土交通省土地・水資源局水資源部「平成16年版日本の水資源」(2004年8月)より〉。これらの水は、天の恵みとなり富士山渓の豊かな生態系を形成してきた。

また、多くの降水は山の表面を浸透し地下水となる。富士山を構成する地質は火山に由来するため透水性が高く、降水の大部分が地下水として保水されるのである。富士山の地下水については、100年近く前の1920年代から精力的な研究が行われてきた。国土の広い範囲を火山が占めている日本において、水文学という水の循環を扱う学問は富士山をめぐる研究からスタートしているといっても過言ではない。

富士山西麗にある白糸の滝。川から流れる滝と、富士山からの湧水による滝が並んでいる。©JP/amanaimages

2倍になった人と変わらない雨量

富士山における最新の研究では、地域により湧水(地下水)の年代が大きく異なり、30年未満の湧水が観測される場所と、50年以上の湧水が観測される場所に分かれることが指摘されている。水が貯まった場所が、現在の富士山である「新富士火山」なのか、あるいは1万年前に存在し現在の富士山の下層に存在している「旧富士火山」なのかによって、年代に大きな違いが出ている。

一方で、近年の富士山周辺の環境の変化も、水資源に大きな影響をもたらし始めている。
増加した登山客の排泄物や、ゴミの不法投棄が水質を汚染してきた。一時期は、登山道周辺で垂れ流された糞尿やトイレットペーパーによる悪臭が問題視され、その影響は甚大であった。現在では環境に配慮したトイレの整備など対策は進んでいる。しかし、2013年の世界文化遺産登録の結果、20年前と比べて登山客や観光客が倍増していることを考えると、地下水を始めとする水資源の水質問題は楽観視できない。

水という人間の生活に不可欠な資源を保有している富士山は、その周辺に暮らす人々の生活の大きな基盤となっている。静岡県の名産であるところの茶は、富士山からの水資源に依存して栽培が行われている。その反面、前述したように、水資源が人間の活動の影響を大きく受けるのも事実である。富士山のことを考えるのに、水は大切な出発点となりうるだろう。

参考文献:
「富士山 大噴火をくりかえしてきた日本最大の活火山」『Newton』2013年8月号 ニュートンプレス、『富士山 その自然のすべて』諏訪彰 同文書院

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Crust地殻

富士山の基底直径は約40kmに及び、その傾斜は美しい対数曲線を描いています。その内部には、小御岳や古富士といった富士山の基盤となったいわば、先祖ともいえる火山が存在しており、この場所で太古から活発な火山活動があったことがわかります。現在も活火山である富士山の地殻運動を、地震動観測データに基づきディスプレイ毎にヴィジュアライズしました。

防災科学技術研究所の火山観測網・V-netのデータを元に、各地点と観測地点の位置関係から、地点ごとのデータを算出しています。画面中央に3次元の揺れ情報を表示し、同じデータによって球、もしくは紐状のオブジェクトが振動します。1秒間に100回以上の観測データがあるため、時間を引き伸ばして1秒間の振動を約1.8秒間で描画しています。

使用データ:地動速度観測データ、出典:防災科学技術研究所 V-net 基盤的火山観測網

Column Inside 3,776「富士山」は4代目だった!?

そもそも、富士山とは何だったのか。それの答えは海底、というのが正しいのかもしれない。いま富士山がある日本列島はユーラシアプレートと北アメリカプレート、フィリピン海プレートの3つの地殻が交わるエリアに存在している。約100万年前、本州を乗せたユーラシアプレートにフィリピン海プレートが衝突し、海底だった部分が隆起するかたちで、現在の富士山から伊豆半島に至るエリアが陸地となったのである。

その後、富士山はプレートの下のマグマをエネルギー源として、噴火活動を繰り返した。その結果、溶岩や火山灰が積もり、山の形状は変化し、現在に至った。

ゆえにプレートによる陸地化だけではなく、噴火活動による変化もまたダイナミックである。現在われわれが見ている富士山は、3つの「旧富士山」の上に存在している。数十万年前、「先小御岳火山」が噴火活動を開始、現在の富士山の原型をつくる。その後、10〜20万年前に「小御岳火山」が噴火を開始し、「先小御岳火山」は火山噴出物に覆い尽くされていった。これと同じかたちで「古富士火山」、「新富士火山」が誕生した。つまり正確にいえば、われわれはこの「新富士火山」を「富士山」と呼んでいるのだ。

富士山の火口部。複雑に入り組んだ地層が観察できる。©TERUO SAEGUSA/a.collectionRF/amanaimages

いつ噴火するかわからない

富士山は活火山であり、噴火の可能性があるので、多くの研究機関がさまざまな観測機器を設置し、その前兆を捉えようとしている。

しかし、現代の噴火予測は、そこまでの精度が保証されていない。さらに、富士山の最新の噴火は、300年近く前の宝永噴火(1707年)である。富士山固有の観測データが不足しているのである。一方で研究者は、この当時の古文書などの資料を分析する歴史的なアプローチを通じても、知見を集めている。たとえば当時の儒学者の自伝には、白い灰が降ったのちに黒い灰が降ったむねが記されている。これは現在行われている堆積物の化学的な分析結果とも一致する。

富士山は比較的「若い火山」といわれることがある。この表現を読むと改めて人間とのスケールの違いに驚かされる。富士山と人間の関係は、まだ始まったばかりなのだ。「噴火」という災厄に対してあらゆる方向から備えを進めると同時に、この大いなる存在への畏怖を忘れてはならないのかもしれない。

参考文献:
「富士山 大噴火をくりかえしてきた日本最大の活火山」『Newton』2013年8月号 ニュートンプレス、『富士山 その自然のすべて』諏訪彰 同文書院

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Fauna and Flora動植物相

富士山では、十分な雨量と地形的特徴によって、独特の生態系が育まれてきました。また低地から高地までが滑らかに連続することから、植生の変化や生息域の研究に適しています。各地点の高度で代表的な植生と野生動物を選びました。

各地点の高度を4つのレヴェルに分け、それぞれの高度における代表的な植物・動物を選択し、実写映像をベースに、各種目の学名や生息標高帯を表示しています。

出典:『富士山-その自然のすべて』 諏訪彰 同文書院

Column Inside 3,776富士山には幻の天然記念物がいた!?

天台宗の僧侶だった中西悟堂が、民俗学者の柳田國男や国語学者の金田一春彦と「日本野鳥之会(現:公益財団法人日本野鳥の会)」を発足させた1934年、富士山の須走で日本で初となるバードウォッチングが行われた事実はあまり知られていない。日本全国で確認されている鳥類およそ450種のうち、富士山には約185種が生息している。哺乳類は特別天然記念物も含め120種中42種が確認されている。富士山の自然は、多種多様な動植物を育ててきた。

富士山の生態系について考えるときに考慮しなければならないのは、この山が1万年前以降に成長した「若い」火山であるという事実である。古来から日本の高山に生息する動植物の一部は、いまだに富士山の高標高部には侵入ができていないのだ。

森林が発達できる限界の高度を指す「森林限界」は、同じ中部地方にあり気温的にも近い南アルプスで2,800mであるのに対して、現在の富士山のそれは2,400m程度である。そして、その領域は山体の上部に向かって徐々に拡大している。落葉針葉樹のカラマツが、周りに木がない標高2,400m程度の斜面で、強い風に耐えるように斜めに立っていることがある。そこでは現在進行形で拡がりつつある富士山の植生を観察することができるのだ。

富士山の山肌にはっきりと見える「森林限界」。©TOSHITAKA MORITA/SEBUN PHOTO/amanaimages

生態系に完成形はない

富士山に生息している特別天然記念物に、ニホンカモシカがいる。絶滅危惧種として保護されているこの動物は標高2,000〜3,000mに住んでおり、しばしば人間に目撃されることがある。もともとニホンオオカミがニホンカモシカを襲うことが多かったが、ニホンオオカミが絶滅した近年では、捨てられた犬が繁殖したとみられる野犬によって命を落とす例が多いという。これは外来種が生態系を壊している例ともいえる。

その一方で、人間が持ち込もうとして根づかなかった生物もいる。1960年に絶滅が危惧されていたライチョウを富士山で繁殖させるプロジェクトがスタートした。しかし、同じ気候条件の白馬岳で捕獲された7羽は残念ながら定着せず、70年以降の目撃例はない。「若い」植生であったため、餌となる高山植物が富士山にはなかったことが理由と考えられている。

人間はときに自然を破壊し、ときに保護しようとする。しかしそんな人間の活動とは関係なく、富士山は1万年前からそこに住む生き物たちを、あるがままに受け入れてきた。富士山の周りにいる生き物は人間も含めて、現在進行形で変化している生態系の一部なのである。

参考文献:
「富士山 大噴火をくりかえしてきた日本最大の活火山」『Newton』2013年8月号 ニュートンプレス、『富士山 その自然のすべて』諏訪彰 同文書院

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